外国人技能実習制度 相次ぐ失踪などを受け新制度へ たたき台
外国人の技能実習生の失踪が相次いでいることなどを受けて、政府の有識者会議は、今の技能実習制度を廃止して新たな制度をつくるとした最終報告書のたたき台をまとめました。これまで原則できなかった別の企業などに移る「転籍」を一定の要件のもとで認めるとしています。
相次ぐ失踪などを受け新制度へ たたき台
技能実習制度は外国人が最長で5年間、働きながら技能を学ぶことができますが、違法な低賃金で長時間労働を強いられるケースなどもあり、出入国在留管理庁によりますと、去年は過去2番目に多い9006人の技能実習生が失踪しました。
こうした事態を受けて、政府の有識者会議は今の技能実習制度を廃止して、新たな制度をつくるとした最終報告書のたたき台をまとめました。
それによりますと、新制度では外国人を原則3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成することを目指します。
介護や建設など専門の知識が求められる特定技能制度は維持しますが、移行するには技能と日本語の試験に合格することが条件になります。
賃金高い都市部などに人材流出 懸念の声も
外国人技能実習制度の見直しに関する最終報告のたたき台で、同じ職場で1年間勤務するなど一定の条件を満たせば転籍を認めるという方針が示されたことについて、地方の企業からは賃金の高い都市部などに人材が流出するのではないかと懸念する声も出ています。
愛媛県松山市の食品メーカーでは5年前からミャンマー人の実習生の受け入れを始め、現在ではおよそ40人が麺類などの製造ラインの中核を担っています。
この会社では、能力に応じて1年ごとに実習生の時給を上げているほか、中古の戸建てを寮として7軒購入し冷蔵庫や洗濯機といった家電製品も提供するなどして安心して働ける環境を整備してきました。
しかし、3年間の実習を終えたあとほとんどの実習生が転籍可能な在留資格に変更して、賃金の高い都市部などの企業に移っていったといいます。
転籍支援にも課題
現在の外国人技能実習制度でも経営上の都合や暴行などの人権侵害などやむをえない事情がある場合はほかの会社に転籍することが認められていますが、転籍先がなかなか見つからないケースも出ています。
愛知県内の工場で働いていたベトナム人技能実習生の30代の男性も先月退職となりましたが転籍を希望していて、所持金が少ないため知人に紹介されたシェルターで生活しています。
ただ、転籍先は現在の制度では原則として監理団体が同じ作業内容の会社を探す必要があり、この男性の監理団体も「送り出し機関にも掛け合って転籍先を探しているが作業が細かく分けられていて受け入れてくれる会社を見つけるのは難しい」として国などの支援の強化を求めています。
男性は、ベトナムに障害がある兄がいて毎月薬代などの仕送りをしなくてはいけないほか、入国前にした借金を返済できておらず焦りは募っています。
転籍緩和 背景は
技能実習制度は、人材育成を通じた国際貢献などを目的に1993年に始まりました。
農業や漁業、建設業など88職種で最長5年間働きながら技能を学ぶことができ、出入国在留管理庁によりますと、ことし6月末35万人8000人余りいるということです。
一方で、この制度をめぐっては安い労働力として外国人が働かされ、違法な長時間労働をさせられたり職場で暴力を受けたりして失踪するケースも相次ぎました。